松坂屋静岡店ではtime for projectの第二弾となるアートプロジェクト「time for tea お茶の時間」を開催いたします。大河ドラマをきっかけに静岡は全国から注目を集めています。この機会に静岡名物の代表格であるお茶に、アートの視点から改めてスポットを当てました。
お茶を淹れたり飲んだりする時間も含めて、お茶のある景色は、私たちの生活に豊かな時間をもたらしてくれます。本展では、古(いにしえ)を稽(かんが)え、現代の感性でお茶の時間を表現する作品など、生活の中のアートやデザインの楽しみ方をご提案します。
〈time for projectとは〉
松坂屋静岡店は2022年11月に開店90周年を迎えました。time for projectでは、「時」をテーマとするインスタレーションの展示や体験を通じて、お客様が新たなコミュニケーションやイマジネーションを生み出すきっかけになる場所・時間の創出を目指します。
\ アートと茶会を掛け合わせた体験型アートイベントで、新しいお茶の楽しみ方を提案! /
場所:北館2階アート&ラグジュアリーサロン Blanc CUBE CUBE3
日時 :2023 年 1 月 22 日 ( 日 )12:30-13:15
講師 : 中村羊一郎 ( 静岡市歴史博物館館長 )
参加費 : 無料
協力 : 静岡市歴史博物館館
庶民の番茶文化研究の第一人者である中村羊一郎氏によるトーク。「お茶しませんか」という言葉は、なぜ生まれたのでしょうか ? 静岡のお茶の歴史をひもときながら、家康から庶民の茶文化まで、お茶と人との関わりについてお話します。
■profile 中村羊一郎
静岡市生まれ。東京教育大学文学部史学科卒業 県立高校教諭、静岡県史編さん室長、高等学校長、静岡産業大学教授などを経て現在、静岡市歴史博物館館長、静岡産業大学総合研究所客員研究員、博士 ( 歴史民俗資料学 )。〈専門〉日本史学・民俗学 〈主要著書〉「番茶と庶民喫茶史」( 吉川弘文館 )「イルカと日本人 ( 吉川弘文館 )「ミャンマー いま、いちばん知りたい国」( 東京新聞 )「お茶作り名人紀行」( 羽衣出版 ) など。庶民のお茶の実態を求めて国内はもとより中国、東南アジアとくにミャンマーでの調査を続けており、「番茶」をアジア共通の庶民の日常茶として位置付けた。
場所 :北館2階アート&ラグジュアリーサロン Blanc CUBE CUBE3
インスタレーション / 山口藍 ( アーティスト)・茶器 / 本原令子 ( アーティスト)
日時:2023 年 1 月 22 日 ( 日 )14:00~/15:30~ 各回 10 名 ( 事前予約制 )
講師 : 森内吉男氏 ( 森内茶農園 / 日本茶インストラクター、茶もみ師範 )
参加費:10,000 円 森内茶農園の高級茶(7 種)とお菓子(5種)、本原令子の茶器(一客)付
山口藍のアート空間と、本原令子の茶器で愉しむカジュアルなお茶会。茶師は「御用茶」として献上された歴史ある本山で江戸時代から続くお茶農家であり、数々の茶品評会で高く評価されている森内吉男。英国王室とも深い繋がりのあるロンドンの5つ星ホテル「クラリッジズ」のアフタヌーンティーで使われている紅茶をはじめ、7種類の高級茶と美味しいお菓子を味わうことができます。栽培の違いによる静岡茶と美味しい入れ方を学びながら、ちょっとアートなお茶の時間を提案いたします。
■講師プロフィール 森内吉男 ( 森内茶農園 )
静岡市本山茶産地で 9 代続く茶農家。約 3ha の茶園に多数の品種を栽培する自園自製の茶農家。先代より全国茶品評会をはじめ各品評会に入賞実績多数。近年は、全国茶品評会 9 年連続入賞中 2022 年北米茶協議会の Golden Tea competition( 茶品評会 )の日本茶部門で優勝。その他、紅茶・烏龍茶などでも海外での入賞実績あり。静岡市茶手揉保存会に所属し全国手揉製茶技術競技会で優勝。また手揉茶品評会でも入賞多数。日本茶インストラクター。日本茶アドバイザー養成講座講師。
\ 観て楽しむお茶の世界 /
場所:北館1階 エレベーターホール前
期間:2022年12月26日(月)→2023年4月(予定)
鋼のメッシュで覆われた40個の電球が、椅子のスイッチに接続され、やわらかい光を放つ「lighting chair」による、アートなティータイムをイメージしたインスタレーション。遊び心あふれる作品を探究する岡本光市の創作活動の特別な位置付けであるライトとスイッチをテーマにした作品。
■アーティストprofile 岡本光市
サウンドプロデューサー/プロダクトデザイナー
1970年静岡市生まれ。1997年よりオランダのテクノレーベル「X-Trax」よりbekkou名義で音源「hi light」をリリース。以後オランダやイギリスのレーベルを通じて音楽活動を行う。ダッチデザインに魅了され、2005年よりプロダクトデザインの作品を発表。2006年に共栄designを設立し、製品は30カ国以上のデザインブランド、ショップ、美術館などで扱われている。2018年にはアウトドアブランド「FIELDRECORD」を展開するなど、アートと音楽、デザインを横断するデザイナーとして活動している。
場所:北館2階 パブリックスペース
期間:2022年12月26日(月)→2023年4月(予定)
「お茶、飲もう」と言う時、それは紅茶や緑茶、コーヒーなど、ある一定のものを一緒に飲むのでなく、ゆるりと座って話そうという意味が含まれる。そして、どのお茶を淹れるにも水が必要だ。私たちが住む星の水の循環に関心を寄せ、人間の体も水の通り道と考える本原にとって、お茶の時間は「脳内散歩」。。。本展ではそんな思考の断片が散りばめられたさまざまな作品とその背景、そして、それらが生まれるアトリエを再現した「my cup of tea」(私のお気に入り)をインスタレーションとして展示する。
2011.made@ekwc
■アーティストprofile 本原令子
1963 年生まれ。美術家 / 陶芸家。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業、1992 年にロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)セラミックスアンドグラス修士課程修了。2011 年にヨーロピアンセラミックワークセンター (オランダ )でレジデンシーに参加。
粘土という素材を基に対話的、社会学的アプローチで表現する。太古の昔より私たちの暮らしと共に在り続けたセラミックと人の関係性を問う「Ceramics A to Z」をはじめ、近年はコミュニケーション手段としての対話から、社会的相互行為としての社会化の取り組み「Kitchen Stories」( 港まちづくり協議会、2022) なども手がける。陶芸という枠にとらわれず、コンセプチャルな思考とエンパシーな対話を通じて、新たなセラミックと人との関係性を追求している。近年の主な展覧会に韓国国際陶磁ビエンナーレ (2015)、富士の山ビエンナーレ ( 富士、2018) など。「ARTORO( アートロ )」(2012-2017) の活動を記録したエッセイ「登呂で、わたしは考えた。」
( 静岡新聞社 ) 上梓。
場所:北館2階 Blanc CUBE(CUBE3)
期間:2023年1月18日(水)→24日(火)
紀元前から薬草として服用されたお茶は、人を穏やかにし今も尚私たちを平らかに緩やかに次へと導いてくれる。その昔、町人は狭い長屋でお茶をすすりながらそれぞれの小さな社会を作っていたのだろう。武士は一服しながら心を整えていたのかもしれない。そして利休は茶碗の茶を服すために考えられた建築と室礼の中でその茶を通して日本独自の文化を見出したように、お茶が人にもたらす効果は今も昔も変わらないように思える。本展では、こうしてお茶を服すときこそ物を思い季節を見る時間と捉え、その時に見えていたかもしれない景色を立体/絵画/版画作品として、庭に見立てた空間で四季を巡る絵巻のように配したインスタレーションを展開する。
「きき」(2022)和紙、布、墨、アクリル絵具 23.5×18.3cm
撮影:宮島径
©︎ ai yamaguchi・ninyu works
Courtesy of Mizuma Art Gallery
■アーティスト profile 山口藍
1977 年東京都生まれ。1995 年女子美術大学芸術学部工芸科入学後、99 年にニニュワークス結成。「とうげのお茶や」で遊女としてクラス少女たちを、独特の支持体を用い、繊細かつしなやかな描線で表現する。江戸時代の文化や風俗を下敷きに、琳派、和歌などさまざまな日本の美を継承しつつ、新たな “美人画” を描くべく独自の理想美を追求している。国内に留まらず、活動の場を海外にも広げ多くの注目を集めている。近年の主な展覧会に「Kamisaka Sekka: dawn of modern Japanese design」( ニューサウスウェールズ州立美術館、オーストラリア、2012)、「大古事記展ー五感で味わう、愛と想像の物語」( 奈良県立美術館、2014)、神宮の杜芸術祝祭「百年の杜のアート『紫幹翠葉』」( 明治神宮ミュージアム、東京、2020)、個展「山あいの歌」( ミヅマアートギャラリー、東京、2022) など。
場所:北館2階 Blanc CUBE(CUBE2&3)
会期:2023年3月1日(水)→7日(火)
増子は2006年より自然と人間の協働で生まれる盆栽の景色をペン画で制作をはじめ、2011年からは、様々な土地に移り住む中で、出逢ったものや人から影響を受けた作品を展開している。栃木県の益子では、山水土瓶の絵付師、皆川マスの描く人そのものともいえる景 色に魅せられた。山水土瓶は明治時代に流行し、様々な絵付師によって描かれてきたが、その時代に完成した鉄道網によって、人々はより遠くの景色を観に行けるようになった。そして自身の馴染みのある景色と新しい景色とを重ねあわせてきたのだろう。本展では、そんな汽車土瓶に描かれ続けてきた山水の景色をテーマにしたインスタレーションと、盆栽の景色をテーマにした作品で構成される。汽車土瓶発祥の地と言われている静岡の地で、様々な景色の重なりや繋がりを顕現する。
「移ろう景色 皆川マスの絵付より」(2020)
サイズ:80.4×60.5×2cm
素材/技法:アクリルガッシュ、インク、ワトソン紙、パネル
制作年:2019
■アーティスト profile 増子博子
1982 年宮城県生まれ。宮城教育大学大学院 教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了。2006 年から盆栽を人と自然の関わりの象徴として捉え、ペン画で描き直す試みを続けている。2011 年からは、住む場所の移動によって出会ったものや人との関わりから生まれるものを探りつつ、様々な技法で作品制作・発表を行う。最近の個展に、「松のことは松に習え」Gallery MoMo( 東京、2020)、「よくよく、沃野」Cyg art gallery( 岩手、2020)。グループ展「IMA をうつす 7 人」岩手県立美術館 ( 盛岡、2022)、「地つづきの輪郭」セゾン現代美術館 ( 軽井沢、2022)、「日常をととのえる」はじまりの美術館(福島、2022)、「移し / 移り 熊景をたどる」Cyg art gallery(盛岡、2022)など。葛巻町に引っ越してからは、葛巻生まれの木彫り熊の調査を行っている。